外国人社員が定着する職場づくりとは?日本語支援を含めた5つの方法
外国人社員の離職は、企業にとって人材損失だけでなく、チームの士気や業務の継続性にも影響を与えます。このページでは、離職の背景や言語・文化の壁に注目し、企業が実践できる具体的な対策をご紹介します。最後には、日本語支援を中心とした実践的な研修サービスについてもご案内します。

1. 外国人労働者数と離職の実態(公的データより)
厚生労働省の「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」によると、日本国内で働く外国人労働者数は2,302,587人で、前年から約25万人(+12.4%)増加し、過去最多を更新しました[1]。
国籍別の内訳(上位3か国)
- ベトナム:570,708人(24.8%)
- 中国:408,805人(17.8%)
- フィリピン:245,565人(10.7%)
国籍別では、上位3か国の外国人労働者が全体の過半数を占めており、特にベトナムや中国の比率が高くなっています。
産業別の就業状況(上位4業種)
- 製造業:552,000人(27.0%)
- サービス業:321,000人(15.0%)
- 卸売業・小売業:264,000人(12.0%)
- 宿泊業・飲食サービス業:234,000人(11.0%)
外国人労働者は多くの業種で活躍しており、特に製造業が全体の約3割を占めています。近年では、建設業や医療・福祉分野での増加が著しく、人手不足を補う重要な戦力として期待されています。
在留資格別の内訳(主な3区分)
- 専門的・技術的分野:718,812人(+20.6%)※初めて最多に
- 身分に基づく在留資格:629,117人(+2.1%)
- 技能実習:470,725人(+14.1%)
在留資格別に見ると、2024年時点では「専門的・技術的分野」が初めて最多となり、企業による高度人材の採用が進んでいることがわかります。一方で、「技能実習」や「身分に基づく在留資格」による就労も依然として多く、多様な在留背景を持つ人材が日本の現場で活躍しています。
受け入れ体制の課題
IMD『世界競争力ランキング2024(World Competitiveness Ranking 2024)』によれば、日本は「外国人高度人材の受け入れ体制」において64か国中58位と評価されており、企業による支援体制の整備が急務とされています[2]。
2. 外国人社員の離職につながりやすい課題
外国人社員の離職リスクは、本人の適応力の問題だけではなく、企業側の受け入れ体制や職場文化とのミスマッチによって生じるケースが多く報告されています。以下に、特に見落とされがちな要因を整理します。
- キャリアパスや評価制度の不透明さ
昇進・昇給の仕組みや、どのような行動が評価につながるのかが明確でない場合、将来的な見通しが立てづらく、早期離職につながる傾向があります。 - コミュニケーション上のすれ違い
言語の壁だけでなく、日本特有の間接的な表現や、暗黙の了解を前提としたコミュニケーション様式が、外国人社員にとって理解しづらく、業務上の認識ずれや心理的ストレスを生むことがあります。 - 職場内における孤立感
周囲に相談しやすい相手がいない、あるいは同じ文化的背景を持つ社員がいない環境では、悩みを抱えたまま孤立し、最終的に離職に至るケースもあります。 - 生活環境への不安
住居・医療・子育て・ビザ関連など、生活面での支援が不足していると、勤務継続への不安材料となります。制度は整っていても、情報提供やサポートの仕組みが不足していることが原因となる場合もあります。
これらの課題は、組織の制度設計やサポート体制の見直しによって、未然に防止・緩和が可能です。特に、「わかりやすい説明」と「相談できる仕組み」の整備は、外国人社員の定着を高めるうえで重要な要素となります。
3. 離職が企業にもたらす影響
1人の離職は、採用・育成コストだけでなく、チーム全体の業務負担やモチベーションにも影響します。特に外国人社員の場合は、特定のスキルを持つ人材であることも多く、損失は計り知れません。
また、離職を繰り返すことで「外国人が定着しにくい職場」と見なされ、今後の採用活動にもマイナスに働くことがあります。
パーソル総合研究所(2019年)の調査では、外国人社員の離職理由のうち、約4割の企業が「言語やコミュニケーションの課題」を挙げています。 [3]。
また、厚生労働省の『人材定着・離職防止マニュアル』(2020年3月)によると、1人の社員が離職した場合、その社員の年収の約3分の1程度の損失が発生するといわれているそうです。採用・育成・引き継ぎに加えて、チーム全体の士気や信頼関係にも影響することが懸念されます [4]。
4. 離職を防ぐための5つの対策
外国人社員が長く安心して働ける環境をつくるには、「語学力」や「業務スキル」だけでなく、組織内での心理的安全性や将来への見通しも大切です。ここでは、企業が実践できる具体的な取り組みを5つに整理してご紹介します。
① 入社初期の不安軽減
初期段階での不安や孤立感を軽減するために、メンター制度の導入や、定期的な1on1ミーティングが有効です。疑問や不安を気軽に話せる関係性を築くことで、早期離職を防ぐ効果が期待できます。
② キャリアの見える化
昇進や昇給の仕組み、キャリアパスを明確に伝えることで、「この会社で成長できる」という将来への期待感を高めることができます。評価制度の透明性や説明機会の確保も重要なポイントです。
③ 組織内の異文化理解促進
異文化に対する理解や配慮がある職場環境は、外国人社員の安心感を大きく左右します。外国籍社員だけでなく、日本人社員やマネージャーに対する異文化トレーニングを行うことも、職場全体の定着率向上に寄与します。
④ コミュニケーション力の強化
言語の壁は、業務上のミスや心理的な距離を生む大きな要因です。日本語力の向上支援に加えて、「遠慮せず相談できる風土づくり」もセットで進めることが求められます。上司や同僚が気軽に声をかけられる雰囲気が、日常の安心感につながります。
⑤ 継続的なフォローと傾聴の仕組み
定期的な面談やヒアリングを通して、社員の変化や困りごとに早めに気づける体制が重要です。特に、匿名で意見を伝えられる仕組み(例:無記名アンケート、外部ヒアリング、意見投函ボックスなど)があると、本音を引き出しやすく、深刻化する前の対処が可能になります。
?外国人社員が匿名で意見を伝えられる仕組み(例)
外国人社員が安心して声を上げられる環境を整えることは、職場の信頼関係づくりに欠かせません。以下は、匿名性を保ちつつ意見を届けることができる実践例です。
| チャネル名 | 内容・特徴 | メリット |
|---|---|---|
| 匿名アンケートフォーム(定期配信) | GoogleフォームやSurveyMonkeyなどで、月1回程度の簡易アンケートを実施。「外国人社員向け設問」を含めると効果的。 | 本音を拾いやすく、翻訳機能を使えば言語の壁も低い。 |
| 社内チャットツール内の「匿名意見箱」 | SlackやTeamsに匿名投稿ボットを連携し、誰でも気軽に投稿できる。 | リアルタイムに反応が届きやすく、心理的安全性の向上につながる。 |
| 第三者によるヒアリング代行 | 外部カウンセラーやコーチが個別に聞き取りし、要約形式で報告。本人は特定されない。 | 外部だからこそ本音を話しやすい/社内への不信感を和らげる。 |
| エスカレーション専用メールアドレス | HR部門とは別のチームや第三者に届く窓口(例:feedback@〜)を設置。返信不要の形式も選べる。 | 管理職を気にせず、安心して意見が出せる。 |
5. 言語の壁にどう対応するか
業務に必要な日本語を十分に理解できていない場合、指示の誤解、質問できないストレス、自信の喪失につながります。
「わかっているように見えるけど実は伝わっていない」というギャップを減らすには、語彙や文法だけでなく、職場で実際に使われる日本語の習得が重要です。
実際の現場では、単に単語や文法を知っているだけではなく、日本特有の表現や言い回しを理解することが重要です。特にITや専門職の現場では、以下のようなケースでコミュニケーションの行き違いが起こることがあります。
- 内と外の敬語の使い分け
社内向けと社外向けで言葉遣いを変える必要があり、同僚には「〜してもらえますか」と言っていたのを、お客様にも同じ表現で伝えてしまい、失礼にあたると指摘された。 - 本音と建前の理解
「検討します」「前向きに考えます」という言葉を、文字通り「すぐに実施する」と理解してしまい、業務の優先順位がずれた。 - あいまいな依頼や遠回し表現
上司から「少し手直しをお願いします」と言われ、どこをどう直すのか明確に聞けずに悩んでしまった。
このような「日本語の奥行き」に対する理解不足が、ストレスや孤立感の要因になることも少なくありません。
6. 日本語研修によるサポート
Japoninでは、外国人社員が職場での「伝える力」「受け取る力」を身につけることで、安心感と信頼関係を育むサポートを行っています。
人材課題や受講者のレベル・目的に応じてカスタマイズが可能で、フレックス型・固定型のどちらにも対応したオンラインレッスンをご提供しています。
- CEFR準拠のレベル別クラス
- 業務に直結する実践的な教材
- 担当者との進捗共有
?企業ご担当者様へ
外国人社員の離職を防ぎ、安心して働ける環境を整えるには、日常業務における日本語での「伝える力」「受け取る力」の支援が欠かせません。
Japoninでは、多国籍チームや初任者向けのフォローアップとして、敬語やビジネスマナーを含む日本語トレーニングも行っており、実践的なコミュニケーション力の定着に役立ちます。
詳しくは、企業向けレッスンサービスのご案内をご覧ください。

出典一覧
- [1] 厚生労働省『外国人雇用状況の届出状況(令和5年10月時点)』
- [2] IMD『世界競争力ランキング2024(World Competitiveness Ranking 2024)』
- [3] パーソル総合研究所『外国人社員の日本語学習と定着に関する調査(2019年)』
- [4] 厚生労働省『人材定着・離職防止マニュアル』(2020年3月)
- 外国人社員向け日本語研修:配属先や職種に合わせた柔軟な研修内容
- ビジネス日本語クラス:社内報連相や敬語など、実践的な日本語を学ぶ
- 接客・ホスピタリティ日本語クラス:現場定着と離職防止を支える会話力